tnkado’s blog

駄文で綴る中年のたわごと(戯言)です

「押しボタン式信号機」 後編


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その女の子に頼まれた、祥月命日の昼前

 

いつも花束が供えられている場所に行くと

小さな男の子を連れたご夫妻が

新しい花を供え、お線香に火をつけていた

 

私はそのご家族に近づき

「〇〇 〇〇〇」さんのご家族ですか?

と、声を掛けた

 

ご夫妻は驚き、怪訝そうな顔をして私を見た

 

私はこれまでの経緯を説明したけれども

不信感が払しょくされることはなく

明らかに不審者と思われていた

 

私の隣にいる女の子が、当事者しか知り得ない

「あの日の朝の出来事」を、そっと私に教えてくれた

 

あの日の朝食時

ママは熱を出してグズっていた、幼い弟の

△△君の面倒を見るので精一杯で

「〇〇はお姉ちゃんなのだから

自分のことは自分でして」と少しきつめに云われ

 

「ママなんか大嫌い

△△も産まれてこなければ良かったのに」と云い

泣きながら家を飛び出して、学校に行く途中

交通事故に遭ってしまったこと

 

「ママが責任を感じてしまっているけれど

悪かったのは、〇〇だということ」

「ママは悪くないので、パパはママを責めない欲しいこと」

「これからは、ママとパパは喧嘩しないで欲しいこと」

「本当は、ママが大好きなこと」

「弟の△△も、可愛くて大好きなこと」

「ママにもう泣かないで欲しいこと」

 

そして

「ママのお腹に新しい命が宿り

将来産まれて来る子には

〇〇と同じ場所にホクロがあること」

 

私は、女の子の言葉を代弁し伝えた

 

母親は嗚咽を堪えることが出来ず

泣き崩れた

 

私は名前を聞かれたが

答えることは出来ない旨を伝え

その場を去った

 

その女の子は

これ以上悲しい思いをする人が増えないよう

今もボタンを押しては、車を止めている

 

そして、

時々だけど

 

私の元に遊びに来てくれて

変なのが憑いていると

教えてくれる

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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