tnkado’s blog

駄文で綴る中年のたわごと(戯言)です

「北風小娘」18


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その小さな集落の真ん中あたりを

少し大きな川が流れていた

 

川の水は田圃に引き込まれ

八十八夜を迎える頃には

人々がにぎやかに田植え作業に勤しみ

川の周囲は緑色に染まる

 

盂蘭盆が過ぎる頃には稲穂も大きくなり

月が替わる頃には黄金色に輝く

秋の実りを収穫する人々で再びにぎわう

 

冬枯れの田圃を見下ろす低い山の中腹に

農家造りの屋敷がある

 

その屋敷の庭にある柿の木の枝に

「あんず」「かりん」「市」が

並んで座っている

 

昨夕までの雨で濡れた落ち葉も

夜に吹いた冷たい風で表面が乾き

小枝なども混じり、壁沿いや木の根元などに

寄せるように集まっている

 

老婆が落ち葉や小枝を熊手で集めて

火をつけようとしていたが

葉の表面は乾いているが

下の方はまだ湿っているようで

なかなか火がつかない

 

「北風小娘のあんず」が

「フッ」と口笛を吹くように短く息を吐くと

やさしく、やわらかい風が吹き

「パッ」と葉に火がついた

 

老婆は火の上にたくさんの小枝をくべて

「燠(おき)」と呼ばれる

炭火のようなものを作ると

 

小ぶりのサツマ芋をアルミホイルに包み

「燠(おき)」の中に入れ焼き芋を作り始めた

 

その様子をみている3人娘の腹の虫が

今日も元気に鳴いていた

 

 

 

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