tnkado’s blog

駄文で綴る中年のたわごと(戯言)です

邪鬼 ~ 鬼に憑かれた男~(捌)


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「んっ・・・何だ???」
「声が何で頭の中で聞こえる???」

と 男が訝しげに思った刹那

「キャッ」と叫ぶ女性の声がした
職場にいた全員が声のした方向を向くと
苦労知らずの2代目ボンボン専務が
ニヤニヤしながら突っ立ていた

そいつは 従業員は文句言えないと
思いこんでいる勘違い野郎で

おそらくいつものように 女性社員を狙い
後ろから近づき臀部を触ったり
正面から来た際に すれ違いざまに
胸部や下半身を触ったのだろうと思うと同時に

堪えきれない怒りが込み上げて来た

忘れかけていた記憶と感情は
何かの拍子に 心の扉を叩かれ
鮮やかによみがえる時がある

男は 既に両親は他界していて 
妻子は火災事故で亡くなっており
遠方に暮らす兄弟や甥姪はいるが
一人暮らしをしていた


あの野郎を一発殴って退職するか?

男には わずかな田畑ではあるが
先祖代々の農地が少しあり
両親が亡くなってからは
妻子と家庭菜園をしたり

作付けしきれない農地は
耕作放棄地にならないよう
こまめに除草作業をして
管理をしていた


年金をもらうのは まだまだ先だけれども
男一人の気軽な身分だから
アルバイトと農作業で 
何とか食いつなげるだろう

こんなバカ専務に頭を下げて 
給料をもらうよりも
そっちの方が気楽でいいな

「思い立ったが吉日か・・・」
と覚悟を瞬間に決めると
椅子から立ち上がった

と その時
額の左に出来た“”しこり“”のようなものが
「ズキン」と痛み

「兄ちゃん この人 
 あのニヤニヤ野郎に怒っている」

「ぶん殴るつもりらしいよ」

「兄ちゃん 
 オイラも あのニヤニヤ野郎は嫌だな
 代わりに天誅を食らわせてやっていいか?」
 と またも頭の中で声が聞こえた

「アオ・・・駄目だよ」
「やっちゃダメだよ」

「兄ちゃん ごめん
 この人の怒りの心が
 我慢できないっていっている」

 額の左に出来た“”しこり“”のようなものが
 再び「ズキン・・・ズキン」と
 さらに痛みを増した

 男は痛む場所を手で押さえながら
「なっ・・何?
 頭の中の声は だれなんだ???」と
 声は出さずに 心の中で問うた

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