tnkado’s blog

駄文で綴る中年のたわごと(戯言)です

「北風小娘」10


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夜空に輝いていた月や星がすこしづつ消えて行き

青から赤に色うつろう明け方

 

樹々が繁茂する森の中はまだまだ暗い

 

その森の中を疾走する小さな生き物がいた

 

カラス天狗の子ども「市(いち)」は

数週間前、人間の子どもが振り上げられた握りこぶしを

避けることが出来ずぶつかってしまい

成人男性の親指くらいの大きさで、身体が小さくて軽いため

弾き飛ばされてしまった

 

「市」はわが身が情けなく、恥ずかしくてたまらなく

「もっと強くなりたい」と願うようになった

 

「修行を積まなければいけない」

「真摯に 実践し 一途に 路を歩まむ」と

「市」は決心し、行動に移した

 

枝から枝に飛び移る練習をしていた時

遠くから「助けを呼ぶ声」が聞こえた気がした

 

「何だろう?」と「市」は思い

かすかな声を頼りに、その主を探しに向かった

 

すると、人間が仕掛けた罠に捕まった

「タヌキ」をみつけた

 

「市」はその「タヌキ」を助けようと試みるが

身体の小さい「市」の力では罠を外せない

 

すると「タヌキ」が

「わたしの懐に入っている八手の葉を使ってください」と云う

 

「市」は「タヌキ」の懐に手を差し込んで

「八手の葉」を取り出した

 

「タヌキ」は、痛みに堪えながら使い方を説明した

 

八手の葉を頭の上に乗せ

両手で印を結び

呪文を唱える

 

教えられたとおりに「市」がやってみると

成人男性の親指ほどの大きさだった「市」は

「あっ」という間に3メートル近く巨大化した

 

巨大化した「市」は、いとも簡単に「罠」を外した

 

「それで、元に戻るにはどうやるのだろうか?」と

「市」が「タヌキ」に聞くと

 

「その巨大化変心グッズは、3分間しか変身できないので

時間が経つと勝手に戻ります」と「タヌキ」が教えてくれた

 

「タヌキ」は「助けてくれたお礼に、八手の葉は差し上げます」といい

森の奥へと去った

 

こうして、楽をして簡単に「力を得る」ことを覚えてしまった

「市」の修業は、その直後に終わった

 

「市」はウハウハでウキウキ気分でその日を過ごした

 

「真摯に 実践し 一途に 路を歩まむ」という決心は

「市」の中から消えてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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